桜涙 ~キミとの約束~



新しいお母さん、つまり、今のお母さんと奏ちゃんが出会ったのは、それから一年後らしい。


「もし良かったら、僕のお母さんになりたいって言われて……僕はただ頷いた。本当は少し嫌だったんだけどね」


僕の母さんは、一人だけだからと弱々しい笑みを浮かべた奏ちゃん。

それはそうだろう。

私だって、もし両親が離婚して、新しいお母さんが来たとしても、心の中では自分の母親は一人だけだと思うだろう。

どんなに素敵な新しいお母さんでも、きっとそう思うんだろうという想像が容易いほどに。

それにしても……一年で新しいお母さんだなんて、何だかちょっと早すぎる気がする。

でも、恋に時間は関係ないともいうからそこは人それぞれなのかな……なんて考えていたら、再び奏ちゃんが声を出した。


「それから、僕には新しい母親が出来て、それからすぐに妹が出来た。でも……心美が生まれてから、僕はひとりぼっちになった」

「どうして……」

「母さんからしたら、僕は他人だからね。育児の大変さもあったんだろうけど、結構きつい態度取られるようになって……」


いつの間にか、奏ちゃんは家にいる事をなるべく避けるようになったらしい。

そこには自分の居場所はないから、と。