私は寝返りをうち、仰向けになるとまだ夢見心地の気分のまま瞼を閉じる。


昔の夢。

桜の雨の下で出会った少年は、奏ちゃんなのに。

最近、少年の姿を思い出そうとすると、どうしてかリクの姿が浮かんでしまう。

……それだけじゃない。

気付けば、リクに会いたいと思う私がいる。


最後にリクに会ったのは、検査結果を聞かされた日。

それから今日までの一週間は会う前と同じで、メールでしかやり取りをしてない状態だ。

会えず、声も聞いてなくて寂しいけど、リクからの励ましメールが来るのは嬉しくて。

入院する前に、距離を置かれるような事をリクに言われたから、なおさら、私の事を考えてくれてるんだと思えてなんだか心がほんわかと温かくなったりした。

この間、駆けつけてくれた時もそうだった。

私は奏ちゃんといる方がいいのだと、自分の事は気にしなくていいからと言っていたリクが、駆けつけてくれた。

そばにいてくれた。

今、あの時より少し前向きに頑張って治療しようと思えているのはリクのおかげだ。

背中を優しく叩いてくれていたリクの手の大きさと温もりを思い出すと、幸せな気持ちがじんわりと心を満たしていく。

その心地よい感覚に身を委ね、私は再び眠りについたのだった。