優しい日差しの下、風に吹かれて薄紅の花びらがひらりひらりと舞い散る。

ああ、久し振りに見たような気がすると、夢を見ている私は思っていた。


「わたし、こはる。あなたはどこのおうちのこ?」


返ってきた、小さな声。


「  」


やはり、今日もよく聞き取れない。

けれど。


「どうして?」


幼い私には聞こえているらしく、首を傾げた。

すると、いつもは聞こえなかった言葉が、今日はハッキリと聞こえた。


「ぼくのお母さんが、いなくなっちゃったから」

「迷子になっちゃったの?」


少年はうずくまったままの首を横に振り、涙混じりの声で告げる。