桜涙 ~キミとの約束~



扉が開いて「失礼します」と男の人の声が聞こえて。

入ってきたのは、担当医の大塚先生。

年齢は、うちのお父さんより少し年上くらいだろうか。

タレ目で優しい外見通り、お話の仕方も穏やかな先生だ。


「ああ、ごめんね。面会中だったのか」

「あ……いいえ」


何が「いいえ」なのか。

私はよくわからずに先生に笑顔を向けた。

大塚先生と奏ちゃんが軽く会釈しあって。


「今日は調子良さそうだね。気分は?」


先生に聞かれると、私は頷きながら答える。


「悪くないです」

「そうかそうか」


優しい笑みを浮かべて先生は奏ちゃんへと視線をうつした。