病室に戻ってしばらく。

ベッドに腰掛け携帯をいじっていると……

──コンコン。

扉をノックする音が、遠慮がちに室内に響いた。

この位置からだと扉が見えず、誰がノックしたのかはわからない。

携帯の右上に表示されてる時計を見れば、時刻はまだ11時。

両親が来るのには早いなと思いながらも「はい」と声を出すと、カラカラと扉が開く音がする。

毎日、清掃員のおじさんが掃除してくれてる綺麗な床を歩く誰かの靴音。

ひょっこりと顔を出したのは……


「奏ちゃん」


メガネをかけた、幼なじみだった。

もしかしてリクも一緒なのかと思ったけど、どうやら一人らしく。


「体調はどうかな?」

「うん、今は大丈夫」


笑みを浮かべてはみたものの、リクがいない事にちょっとだけ……落胆してしまう。