「そうそう。それに、どのみち聞いたって小春のぽわぽわした頭じゃお医者さんの専門用語なんて理解できないだろ?」
からかうような笑みを浮かべながらリクが言うから、私は唇を尖らせた。
「リクにだけは言われたくないもん」
「あ、拗ねた」
「おい陸斗。からかうのはそこまでにしろよ」
「はいはーい」
茶化すように返事して、リクは背にしていた窓の外に広がる雨の景色を眺め始めた。
奏ちゃんが「まったく……」なんて零して、困ったように笑う。
久しぶりの気がする本来の私たちの空気。
嬉しくて、少しだけ心が軽くなる。
そして、気づく。
奏ちゃんとは違う方法で不安を紛らわせてくれた、リクの温かい心遣いに。



