桜涙 ~キミとの約束~



リクが強いのは知ってる。

中学の頃からリクは不良グループの間でもちょっとした英雄扱いだってされてたから。

でも、このままじゃリクが危ないと思った。

だから私はとっさにリクへと走り寄り、手にしてた鞄を地面へと落とすと庇うように両腕を広げ、背を向けたリクの前に立つ。


呼吸もまだ整ってない。

心臓がバカみたいに騒いで暴れてるような気さえする。


だけど、それでも精一杯、目の前で長く固い塊を振り上げた男子生徒を真っ直ぐに見た。


「な、なんだお前っ」


目の前の男子生徒が動揺して動きを止める。

それでリクも私の存在に気づいたんだろう。


「……こ、はる……?」


疑うような、探るような声で私の名前を呼んだ。

私はリクの方を振り向かないまま、相手に向かって言う。


「警察……呼んだ、から。もう……やめて」


息切れしながらも伝えると、誰かが舌打ちするのが聞こえて。