桜涙 ~キミとの約束~



「さっき奏ちゃんは必要ないって言ったけど、私はそんな風に思えない。だから……」

「……陸斗の所に行くの? 僕を置いて。小春まで、僕をひとりぼっちにするのか?」


言いながら、奏ちゃんの顔つきが変わっていくのがわかった。

瞳の奥に黒い炎をちらつかせるように、私を悲しそうに睨んでいる。

私は焦り首を横に振った。


「そうじゃない。そうじゃないけど──」


ひとりぼっちにするとか、そういうのじゃない。

今日だって、奏ちゃんが悩んでいる事があるなら聞こうと思っていた。

でも、リクは今、誰かと喧嘩している。

リクの暗い顔をしていた理由が何かはわからないけど、今、止められるなら、助けられるなら助けてあげたい。


「私、行かないと。早めに戻るからどこかで待ってて! 奏ちゃんはひとりぼっちじゃないよ!」


リクを止めたら奏ちゃんに連絡する。

そのつもりで言い残して、私は鞄を手に取ると急ぎ走り出した。