私を見て、小首を傾げているリクの頬には、絆創膏がひとつ。
私は、眉根を寄せてリクの腕を掴むと同じ階にある踊り場まで連れ出した。
少し広い踊り場は、朝の為か寄り付く人はいない。
それでも教室に向かう生徒が通るので、私はなるべく冷静な声で聞いた。
「喧嘩、いっぱいしてるの?」
聞かれたリクは、アハハと苦笑いを浮かべて。
「まあ、ちょっとね。あー、でも心配しないでいいよ。今のとこ負けてないし」
「そういう問題じゃないよ。いっぱいしてるなんてどうして? 何かあったの?」
他校の生徒と喧嘩する。
今までにも何度かあった喧嘩は、本人いわく、どれも助っ人として参戦してたものだ。
けど、頻繁じゃなかった。
「トラブルに巻き込まれてるの?」
「……トラブル、ね。ある意味そうかもしんない」
ふと、リクの表情が暗くなって。



