やがて学校が見えてきて同じように登校する生徒の姿が多くなってきた頃、「小春」と奏ちゃんが私の名前を呼んだ。
私が視線を向けると、奏ちゃんは相変わらず微笑みを浮かべながら言う。
「今日、デートしようか」
「え……デートって……」
「僕たち、まだちゃんとしたデートしてないだろ?」
やっぱり、と思った。
奏ちゃんは私と付き合っているつもりでいる。
どうして?
何がどうしてこうなってるの?
「奏ちゃん……私はそんなつもりで──」
ここ数日の間、ずっと思っていた事。
ずっと伝えた方がいいと思っていた言葉。
そんなつもりでよろしくと言ったんじゃないの。
このまま流されてちゃいけない気がして、今しかチャンスがないような気がして声にしようとしたのに。
「制服のままだけど、どこか遊びに行こう。行きたいとこ考えておいて」
奏ちゃんは、まるで作り物のような綺麗な笑みを浮かべて、決めてしまった──‥



