「いや、大丈夫だよ」
「本当に? 何だかボーッとしてるよ?」
「うん……少し、気になることがあってね」
「気になること?」
「うん……」
どこか覇気のない声で頷くと、奏ちゃんは考えにふけるように窓ガラス越しに広がる夕方の景色を眺める。
何だか思いつめてる感じにも見えて。
だけど奏ちゃんが話さないなら無理に聞いちゃいけない気もして、私は明るい話題を振ることにした。
思い出したんだ。
奏ちゃんが私の笑顔に救われていると言ってくれたのを。
だから私は、奏ちゃんに今できる事をして少しでも元気になってもらおうと思った。



