「でも簡単に教えるのはおもしろくないから、ヒントだけあげる」
「は?」
何言い出すかと思えば…
すこぶるうざい女だな。
これにひっかかる男は馬鹿だ。
「東 蛍夜」
「は……?」
誰だそれ。
ただ人の名前で男だって事はわかる。
「誰かに聞いてみたら?何かわかるかもしれないわよ」
じゃあと安田先生は片手をひらひらと振って保健室を出ていった。
「じゃあって……」
病人放置かよ。
保健室の先生あるまじき行為。
ただの給料泥棒だ。
俺はため息をついて先輩の眠るベッドの横に椅子を置き、座る。
「東…蛍夜……」
雛先輩と何か関係がある男の名前。
もしかして……
先輩の……
嫌、違う。
違う事を祈りたい。
本気になって、そく失恋とかありえないだろ。
「先輩…東って誰だよ…」
切なかった。
ただ眠り続ける先輩の手を握りしめる。


