「ありがとう先輩♪」


秋くんは何故か嬉しそうに笑った。


「どういたしまして」


私は笑顔を返して道具を洗う。


「ぜひ美術部に入部して下さいね!!」

「ふふっ…」


菜緒ちゃん、頑張ってるなぁ。


部室にいる新入生を勧誘する菜緒ちゃん。


菜緒ちゃんなら私が卒業しても部長としてやっていける。


「秋くんが入るなら入るー」

「秋くんどうするー?」



女の子達は秋くんを取り囲んで騒ぐ。


本当に人気者なんだ…
確かに、すごく可愛いもんね…


女の子達に囲まれながら笑みを浮かべる秋くんを遠巻きに見つめる。


「俺は美術部に入りたいな」

「じゃー私もー!!」

「私も私も!!」



秋くんは絶えず笑みを浮かべている。


…あれ……?


秋くんってあんな笑い方をしてたっけ?


まるで作り物の笑顔を張り付けたような…


私が秋くんの笑顔を見た時はもっと綺麗で、心からの笑顔だった気がする。


秋くん……?


なんでそんな作り物の笑顔で笑うの…?




「部員確保〜!!」


菜緒ちゃんの叫びを聞きながら、何故か秋くんから目をそらせなかった。