「…賑やかだね」

「はい!!」


菜緒ちゃんは嬉しそうに笑顔を浮かべる。


その笑顔を見て私も嬉しくなる。


「雛先輩、また会えた」

「秋くん…」


あんな後があったからか、私の前に立つ秋くんに顔を合わせられない。


「ねぇ先輩、こっち向いてよ」

「う…ん…」


困ったように見上げると、秋くんは優しく私に笑いかけている。


本物に綺麗な笑顔…


「絵、描いてたの?」


秋くんは私のデッサンをのぞきこむ。


「まだ色が無いからわからないでしょ?これはこれから命を吹き込むの…」


私は書き終わったデッサンに青と黒を混ぜて闇夜を描く。


それが乾いた所から白で星を散りばめる。


「わぁ…」

「綺麗……」


周りから感嘆の声が上がる。


鳥もまるで夜空の星の一部のように白で描く。


「この闇夜を照らして、自由を手に入れた白銀の鳥…」


私には絵の中の世界が生きているように見える。


「先輩の手は、何でも生み出せるんだね…」

「え…?」

「先輩が描く絵には命があるみたいだよ…」


秋くんはただ私の絵を見つめていた。


私の手は何でも生み出せる。……何でも……



「違うよ、私は何も生み出せない…。私は…何も出来ないよ…」



私の手は何も守れず、救えなかったんだから…


「…先輩……?」


秋くんは私を心配そうに見る。



「これで完成…かな」



私は絵の具で汚れた手を洗い、皆に絵を披露する。


「お粗末様です」


私は頭を下げる。


皆の目が私の絵を見つめている。


少し緊張した。