「本当、無事で良かった………。逃げないでよ、先輩。俺の話聞いてたなら、答え聞かせて?」


答え…………
それは、秋君を傷つけるかもしれなくても、秋君の傍にいる事を選ぶかどうか………


蛍ちゃんを、忘れるかどうか……


「先輩、東先輩が好きだった雛先輩も、今の先輩の一部でしょ?だから、忘れなくていい、それも含めて先輩を好きになったんだから」



忘れなくてい………?
それも含めて私自身…………



「先輩、俺を傷つける事が怖くて、傍にいれないなら、そんな考え、今すぐ捨てて。俺、そんな事より、先輩の傍にいれない事のほうが辛い」

「そんな………私、秋君を選んでいいの?大切な人達を傷つける事しか出来なかった私が……」


「人が一人で生きていけないって、雛先輩が教えてくれたんでしょ?傷つけ、傷つけられるのは、その人が大切で、誰よりも近い距離にいるからだ。先輩、俺は傷つけられても、逆に先輩を傷つけてしまうかもしれなくても、やっぱり、傍にいて、一緒に生きていきたいって思うよ」




あぁ…………
私、秋君の傍にいてもいいんだ………


秋君は傷つけられてもいいと言った。そして私を傷つける覚悟もして、傍にいる事を選んでくれた。



じゃあ、私は………



「秋君を傷つけるかもしれなくても、また、蛍ちゃんの事で迷って、秋君を、悲しませるかもしれなくても………秋君の傍にいてもいい?ううん、いたい………」



傍にいたいよ………
たとえ、蛍ちゃんとの思い出に過去に囚われそうになっても、秋君がいたら、私は前をむける。


そしていつか、この悲しみが、蛍ちゃんを思い出した時に、幸せだったと胸を張って言えるように………



「秋君、秋君と生きていきたい………」


蛍ちゃん、私………
この人と生きていきたい。


「じゃあ、もう絶対に離さない。一度でも手放したとか、俺どうかしてる。今だってこんなに、雛先輩が好きなのに…」


「不思議、もう秋君を素直に想っていいんだって思ったら………私、秋君がどんどん好きになってる」


「俺なんか、とっくに好きすぎて死にそうだよ。ねぇ、雛って、呼びたい」



秋君が優しく私の頬を両手で包み込む。


「うん、私の名前呼んで?そうしたら、私もう……迷わずにいられるような気がするの」



「雛、好きだよ」


「うん、秋君!」



私に秋君が口づける。
やっと、本当の意味で繋がれた。


「東先輩、雛の事、俺が絶対に幸せにするんで、俺に下さい」


秋君は突然蛍ちゃんの墓石に頭を下げた。



「絶対に離さないし、幸せにします。だから、そこから見守ってやってください!」


「秋君…………。私、秋君が好きです。私、弱いから、きっと蛍ちゃんをたくさん心配させたよね。でも、きっと、私もう迷わずに秋君と歩いていけると思う。だから、秋君を、好きになることを許して下さい」



私の、人生で二度目の恋。


「大丈夫、東先輩は雛の事一番大切にしてきたんだから、雛の幸せを一番願ってる。今度は俺が、俺のやり方で雛を守っていくよ」

「秋君………今まで、傍にいてくれてありがとう。これからも、私と一緒に生きて。私を置いていかないって約束して…?」


「俺、絶対に雛の事置いてかない。だから、雛も俺の事置いていくなよ?」


それに、強く頷き、しばらくそこで、抱き合っていた。



私は今日、秋君と生きる道を選んだ。
たくさんの過去が、私の歩みを止めようとしても、私はもう、迷わずに歩き出せる。


手を引かれるんじゃない。
一緒に歩く人が隣にいるから。


秋君、私と秋君の道が、この先も続いていきますように……