『馬鹿、泣くな』


蛍ちゃんが傍にいてくれるなら、私もう泣かないよ!!


『いいから、笑ってろ』


蛍ちゃんが笑いかけてくれたら、私だって笑うから!!


蛍ちゃんの言いそうな言葉を思い浮かべては、そこにいない現実に絶望する。




「雛って呼んで……お願い」


蛍ちゃん…………
ただ、会いたいだけ、傍にいたかっただけなの……



どこで間違ったんだろう。
思い返せば、後悔する事ばかり。


「私……もう、どうやって生きていけばいいのか、わからないよ……」


あの日から止まった時間。
ただ、時間だけが過ぎて、気がつけばあの日が過去になっていた。


「誰か………助けて………」


『大丈夫だ』


ふいに、声が聞こえた気がした。
そして、冷たいはずの雨が止む。



雨が………止んだ?
でも、雨音は続いている。


「やっと………見つけた!!」


振り返ると、肩で息をする秋君がいた。
私に傘をさしてくれている。


「どうして………?」

「佐藤先輩に、雛先輩の行きそうなところ聞いたらここだって!っ、探しただろ!心配させんなよ!!」



泣きそうな顔で怒る秋君。
雨に濡れているのは、傘もささずに走ったから?


「傘もささないで、何やってんの!風邪ひくし、もっと自分を大切にしろよ……頼むから!」


すると秋君は傘を捨てて私を抱き締めた。



「ごめん、先輩に傘もってきたのに、今はこうしてたい…」


「ぁ…………」


温かい……………
秋君の体温が、私に染みていくようだった。
触れ合う部分から、熱が戻っていく。