「私っ…私…………」


ーポタッ


嫌、泣きたくない………
泣きたくなんかないのにっ!!


泣く資格なんてないのに!!


涙は止まるどころか溢れだす。


「雛ちゃん、まだ……………」

「ごめんなさいっ………」



私は最後まで光子さんの言葉を聞けなかった。



「先輩!!」


私は逃げるようにその場から走り出す。


私はっ……蛍ちゃんからも、光子さんからも逃げて…
秋君の優しさに甘えて、色んな人を傷つけてた!!


「私、最低だ!!蛍ちゃんの事も、秋君の事も中途半端で!!」


楽な方へと逃げてっ………
結局、私は自分が可愛いんだ。


誰に言うでもなく、ただ町中で叫ぶ。
通りすがりの人がそれを不審そうな目で見る。


私は………忘れちゃいけなかった。
秋君との時間が幸せすぎて、大切な人を見殺しにした罪を、罰を忘れちゃいけなかったのに!!


蛍ちゃんの彼女なのに、私が蛍ちゃんを好きでいなかったら、蛍ちゃんは一人だ。他に、償う方法がわからない!



「戻らなきゃ……蛍ちゃんを失ったあの日に…」



私は震える手でスマートフォンを握りしめる。


「…………秋君…ごめんなさい…」


弱い私でごめんなさい。
結局、私は過去を捨てられない。


蛍ちゃん…………
秋君…………



私、やっぱり誰かを傷つける…………


ープルルルッ、ポチッ


「雛先輩っ!!今、どこ!?」

「………秋君………」


秋君の切羽詰まっているのが電話越しにわかる。



ごめんね、秋君………
心配ばかりかけて、私の逃げ道にして………