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下校中、バイトの無い秋君と一緒に秋君の家で映画鑑賞をする事になった。


ビデオ屋さんからの帰り道、私と秋君はこれから見る映画の話で盛り上がっていた。


「先輩、SF好きとかびっくりなんだけど。女の子なら可愛く恋愛♪とか言わない?」


「そうかな?恋愛ってなんか眠くなっちゃうし、こんな力があったら世界征服できるのに!とか想像すると楽しくない?」


「え、何?世界征服したいわけ?先輩、ズレすぎでしょ!本当に飽きない」



爆笑する秋君に私もつられて笑う。


そんな話をしていた時、目の前を歩いていた女性がハンカチを落とした。


「あっ………」


女性はそれに気づかずどんどん歩いていってしまう。
私はそれを拾ってその人を追いかけた。



「あの、ハンカチ落としましたよ!」

「……え、あぁ、ありがとうございま……」



その瞬間、時が止まったような気がした。
お互いにお互いの存在を認識してから、私たちは言葉を発せないでいる。



「雛…ちゃん?」


先に沈黙を破ったのは相手だった。


「先輩、知り合い?」


追い付いた秋君が私達を交互に見つめる。



「…………光子(ミツコ)さん…」


そこにいたのは光子さん、東 光子さんだった。
蛍ちゃんのお母さんだ。


お互いに驚きと困惑が入り交じったような表情で見つめ合う。


嘘、こんな所で光子さんに会うなんて…………



蛍ちゃんの家は母子家庭で、お母さんの光子さんがたった一人で蛍ちゃんを育ててくれたって蛍ちゃんがよく話してくれた。


私の事も、自分の娘のように可愛がってくれた人………



「雛ちゃん、久しぶりね…」


光子さんはやつれた顔で弱々しく笑う。



「………っ……!!」



私は酷い後悔に襲われた。


私は、今まで私一人が辛いんだって思ってた。
苦しくて、悲しくて蛍ちゃんを思い出す度に辛くて………


でも、光子さんは?
私は蛍ちゃんの葬式にも行かないで、逃げたんだ……