「先輩の特別でいられるやら、俺、海とか綺麗なものじゃなくても、なんならゴミでもいいよ?」


「ふふっ、それは言い過ぎだよ!」


おどける秋君に私は笑う。


私、あの頃はこんなに笑えたかな?
ううん、きっと笑えなかった。


今ある私は、秋君がいたから存在する新しい私なんだと思う。青空に焦がれてばかりいた私は、いつの間にか傍にいた海を想うようになった。



「先輩、この色、俺好きかも」


私のキャンバスをのぞき込む秋君。



「私の秋君をイメージした色なんだよ」

「へぇ、先輩からは俺がこう見えてんだ?」


2人で過ごす時間が私の心に色をつけていく。



「秋君、絵が出来たら一番に見てね」

「俺が一番とか、ちょう嬉しい」


ふいに秋君の顔が近づく。
甘い予感に私も目を閉じた。


私は今、とてつもなく幸せだった。