「秋君………?」
秋君の視線を辿ると、私の腕の火傷の痕があった。
これ、亮さんにつけられた…………
まさか、秋君それを気にして?
そう思った途端、その傷が酷く汚く恥ずかしいものに思えた。
咄嗟に片手で痕を隠す。
「……先輩、隠さないで」
そう言って秋君が私の腕を持ち上げ、そこへ顔を近づける。
………え……?
―チュッ
「え、えぇっ!?」
信じられない事に傷痕に口付けられた。
驚きで固まる私に、秋君は優しい笑顔を向ける。
………あ……いつもの意地悪な笑いとは違う、優しい笑顔だ……
その笑顔に胸がキュッと締め付けられる。
苦しいけどどこか懐かしい感覚。
「先輩、そんな傷、俺が上書きしてあげるから」
……この人を、愛しいと思ってしまう……
私は、蛍ちゃんが好きなんだよ?蛍ちゃんだけを思わなきゃいけないのに……
「秋君……」
私、こんな風に幸せに生きていていいの?
「私に、優しくしたら……だめなのに……」
「先輩、だめって言われても先輩だけには優しくするよ?俺」
泣きそうになる私の目元を秋君が親指で拭った。
私が何度遠ざけても、秋君だけはきっと駆け寄ってきてくれる。
いけない事だとわかってて、私は……
秋君に頼ってしまっているんだと思う。


