「ほら、着くわよー!!」


美術部顧問である松永 久子(まつなが ひさこ)先生が声を上げる。


松永先生の事は好き。廃部寸前の美術部を存続させてくれた人だ。




あの時の記憶が蘇る。




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「……蛍ちゃん…菜緒ちゃんごめん…」


誰もいない美術室でただただ立ち尽くす。


来年、美術部が廃部になることになったのだ。
実績のあった蛍ちゃんがいなくなって、部員は実質私だけ。あとは幽霊部員だ。


「蛍ちゃんが守ってきた部活なのに…。来年は、菜緒ちゃんが入部出来るようにって……」



蛍ちゃんがいなくなって、すぐに廃部になっちゃうくらいこの部活は蛍ちゃんに守られてたんだ。


蛍ちゃん………


「蛍ちゃんがいないと……私…何も出来ないんだね……」



私は……どうすればいいの?
蛍ちゃんを失って、今度はその思い出の場所すら失うの……?


「真白、いる?」

「…………松永…先生……?」


教室に入ってきたのは美術部顧問の松永先生だった。


「何泣いてんのよ、真白」


松永先生が私の前に立つ。
何故か顔を上げられなかった。


「……だって………」

「だって?」

「美術部が…廃部になっちゃう…っ…」


悔しくて涙が出た。蛍ちゃんが守ってきた美術部を、簡単に廃部にする先生達が許せなかった。


でも………
一番許せないのは………



蛍ちゃんを見殺しにした私自身。私のせいで蛍ちゃんも、部活も無くなってしまう…


私の……せいで………