「………………………………」
傘の向こうに見えるどんよりとした雲がさらにあの日を思い出させる。
あぁ………
この人もまた私の前から消えてしまうんじゃ……
あの日みたいに、突然手の届かない場所にいってしまったら私は………
「先輩?何考えてる?」
「……え………?」
「また一人で不安になってない?」
あ…なんでかな……
秋君はどうして私の心が読めるんだろう。
いつもそうだ。
いつも秋君は私の核心を突いてくる。
「…雨がね……」
「雨?」
そう雨が……
私を不安にさせるんだ。
「あの日と同じ暗い雨空、雨の音、水溜まりを踏む音…。全てがあの日のように思えて怖いの……」
また誰かを失うかもしれない。
また一人ぼっちになるかもしれない。
「先輩………」
「あ………」
秋君に頭を抱き寄せられる。
傘は器用に持ったまま、雨をしのぎながら。
川沿いでただ秋君の温もりを感じた。
「先輩、俺がいるから……」
「秋…く……っ…」
また涙が流れる。
きっと秋君の服も濡れてる。
「一人じゃない。先輩を今抱いてんの、誰?」
「あっ……っうぅ…」
止まることなく溢れてしまう涙をどうしたら止められるだろう……
「ね、誰?」
「あ…秋くっ…秋君っ…」
秋君の胸にすがりながらしばらく泣いていた。
秋君は、ただ私を抱き締めてくれていた。


