妃紗子は椅子に腰掛ける洸貴の正面に立つと、身を屈めて洸貴のシャツに手をかけた。

ストーンに飾られた長い爪が、器用にボタンを一つずつ外していく。


「インドア派だから仕方ないけど、色が白過ぎね。

でも不思議だわ。
細いけどキレイな筋肉がついてる。

運動なんてしてないんでしょう?」


妃紗子にされるがままになっている洸貴に、俺はハッと我に返った。



「ストップ!

妃紗子!!」


大股で洸貴のそばに近寄る。



「何する気だ?

ここは神聖なる職場だぞ」


妃紗子は俺を振り返って、艶めいた口角をあげた。



「バカね、柊司。

神聖だからこそ冒涜したくなるんでしょ?」


悪びれる様子もなくそう言い放ち、洸貴の方に向きなおる。



「洸貴、

ボタンを掛け違えてたわよ」


「あぁ、そう?」


洸貴はこともなげな様子で、妃紗子に全開にされたボタンを上の方から掛け始めた。