澪は俺と目が合うと今にも逃げ出したそうな様子を見せたので、俺はすばやくビジネスバッグとコーヒーを持って澪に近づいた。



「久しぶりだな澪。

学校の帰りか?」



逃がすものか。

さりげなく声をかける。


「え?

あ、うん…」


澪は小動物のようにおどおどしていて、上目遣いに俺を見た。


150ちょっとの澪と俺では約30センチ身長差があるせいで、澪は俺と目を合わせようとするとどうしても上目遣いになる。

いつも潤んだような黒目がちの目でそんなふうに見つめられたら、飢えた男子高校生なら飛びかかっていくに違いない。

おまけに今は目の縁が薄いピンク色に染まり、なんだか妙に女っぽい---気がする。




洸貴と二人で強引に説得して、澪を女子校に入れておいて良かった。

共学になんて通わせてたら、洸貴と俺は澪のことを心配しすぎておちおち仕事なんてしていられなかっただろう。