「だよねぇ、結香ちゃん♪」


「え!?なにが…?」



あれから、普通にいつも通りにすごし、いつも通り朝を迎え、いつも通り教室でるいちゃんと会話中だった。

みたいなんだけど…。



昨日から私はボー、とすることが多くて今もるいちゃんの話しを聞いていなかった。

というか、今日一日がもう、終わることに驚いた。


だって、あと先生がホームルームしたらあと帰るだけだ…。

今日の、授業を受けた記憶が無いんだけど…不味い。



「だから、先生の話し!!」

せ、先生!?先生って…あの、先生…?
なんの話し、してたっけ…?ヤバい…かなり話し聞いていなかったんだな、私。


「もー、結香ちゃんどうしたの?朝からずっとボー、ってしてるよね。」


「村上。村上 麗華先生。絶対、村上先生って淳先生に気があるよ!! 」


ドキン…


「え…なんでなんで?」


村上 麗華(ムラカミ レイカ)先生。副担で国語の先生だ。たしか、まだ独身で彼氏もいない…。


家事とか全般に得意だけど…性格に少し問題があるんだよね、あの先生。まぁ、一生懸命な所はいいんだけど。


でも、そっかぁー…知らなかったな。
村上先生って先生のことが好きだったんだ。
そう思ったとき、今度は胸がズキンってなった。


やっぱりおかしい。


「だって、好きって超態度見え見えじゃん。必要以上に副担だからって先生に近づいたり、お酒のみに誘ったり。ま、先生は全部断ってるみたいだけど。」


「そーなんだぁ…。」


あの、先生ならやりかねないな。


「マジで知らなかったの!?みんな知ってるよー!しかも、先生みんなの前でアドレス聞いたり!!なんか、うざいよね。
“私は同じ立場だからメール出来るのよ”的なアピールが。本当、嫌いだわ。」



先生の、アドレス…、か。そういえば、私も、知らないな。先生のアドレス。

同じ立場だからメール出来る…そっか、私がいる場所は先生のいる場所とは違うんだ…。

でも、村上先生は同じ場所に…いる。


なんか、先生に近づいたと思うといつも離れていくな…。


なんだろうー…このモヤモヤ。
スッキリしないな。



「おいおい、何をしらけた顔してんだよ、結香。」


「秀くん…。」


「ほら、これやるから元気出せ!!」


「チョコだ!!」


秀くんがくれたのは一口サイズのチョコレート。ありがとう、秀くん。

このチョコ美味しい!口に入れたらとろける感じが堪らないね。よし、今度買おう。

チョコをもらって食べた頃、タイミングよく先生が来た。


ガラッ

「ホームルーム、始めます。」