俺が受け持つことになったクラスの生徒、松下 結香と同居を始めて数週間が経った。


「先生、今日の夜はシチュー作ってみようと思うんですけど、どうですか?」


「…ま、いいんじゃない?」



夏にシチューか。全くどこまでも笑わせてくれる。


こいつと暮らし始めて分かったことがいくつかある。

小さいくせに、結構いろいろなことに挑戦する。俺の身長が182㎝で結香は146㎝だから、36㎝差がある。

あと、誉めるとのびるタイプだ。どんなことでも教えながら誉めていくと、とにかくやる気を出して頑張る。そのため、最近朝と昼は俺が。夜は結香が飯の支度をする。



そして、特に大きいことは…俺自身、こいつの前では素でいられるということ。


「先生ー!明日の授業までに宿題なんて無いですよね?」


「あぁ。」


コイツは普段は子どもっぽいのに時々俺もドキッとしちまう表情をする時がある。それは、反則だよな。


「よかったぁー!」


「だけど…結香にだけ……」


「わ、私だけ…?」

ドキン…。

そう、時々見せるこの表情…。
この顔に、実は俺は弱いんだよな…。
顔をほんのり赤く染め、身長差から自然となる上目遣い…。


「そ、結香にだけ出そうかな…個別で課題。」


「えぇぇ…!嫌ですよー!!」


俺は必死になって隠すんだ…。君に俺のこの思いがバレないように。