何度でも何度でも…

「しるふはストライクゾーン中心通過球しか理解しないだろ」

「海斗がストライクゾーン中心通過球を投げてきたとは思えないけどねー」

「安心しろ、投げてない」

って、おい、こら

本当に淡泊極まりないというか

余裕ぶっこいてるというか

ただ単に危機感がないというか

しるふの不機嫌そうな視線と海斗のあっさりとした視線が交差する

それから流れる沈黙

「はいはーい、そこ。痴話喧嘩は外でやってねー」

無言で視線を交わしていると紗雪の半ばあきれた声が割って入る

その隣では速人君が、相変わらずだね、とつぶやきながら苦笑している

「これのどこが痴話喧嘩なのよ。雪姉も何か言ってやってよ、ホント海斗は女を理解してないのよ」

「大丈夫よ。海斗君は女は理解してなくてもしるふのことはたーんと理解してるから」

雪姉って海斗と妙に分かり合ってるよね

理解に苦しむわ

はあ、とため息をついたしるふに、幸せ逃げるぞ、という海斗のからかい交じりの声が聞こえた