器用な男だからなー

と3年で海斗が作ってくれたさまざまな料理を思い出しながら皿をテーブルに移す

「んー、一週間も帰ってくるなんて珍しいかららしいよ」

ぐつぐつと沸騰している鍋に具材を放り込む

見栄えが良くなるように配置を選びながら鍋の中を埋めていく

醤油ベースのあっさりとした香りが広い部屋に充満する

3月と言えどまだまだ寒い

鍋から出る湯気ではやが心なしか暖かくなった気がする

きっと冷蔵庫清掃のためのメニューであろう鍋

それでもしるふは、この二人で囲む感が大好きだ

「しるふなんだかんだで長期的に帰ってないもんな」

だからもう少し帰れって言ったのに

お玉と取り皿をテーブルに並べる海斗が、紗雪の言葉に納得したように頷く

「海斗に言われたくない。海斗のほうが帰ってないよ。あんなに近いのに」

お玉で灰汁をとりながら、海斗を軽く睨む