何度でも何度でも…

「いやー!!!キャー!!!!!!やだー!!!!」

壁には今日してさらに大音量になった絶叫が鼓膜に響く

壊れた墓の中から素晴らしいゾンビメイクを施したゾンビがぬーと這い出てくる

「うるせって」

それを耳元で聞いていた海斗は、うっとうしげにつぶやく

もちろん、そんなつぶやきを聞けるほどの余裕は、ない

だから、

「やだ!!もういや!!!バカ!!!ばかばかばか!!!!海斗のばか!!!」

別に海斗がばかなのは今関係ないのだが、口をついて出るのはやはりこの平然としている恋人へのあてつけだ

涙目になるしるふの視界にさっと何かが横切った

蝙蝠だ、と思いたい


「…!!!い、やーーーーーーー!!!!!!!」


きっとここまで叫ばれたらゾンビ役をやっている彼らも本望だろうと考えながら海斗はしがみついてきた(さっきからしがみついているけど)しるふを半ば引きずるようにして歩き出す

しるふには見えていないけれど、実はきちんと人魂も浮いていたりする

ふよふよと漂うそれを横目で眺めながら墓を通り過ぎる

時節、ガタンという音を立てて墓が揺れたり、お供え物が落ちたりするたびにしるふがびくっと体を震わせている