何度でも何度でも…

「あの、お連れ様、大丈夫ですか?」

あまりの怖がりように係員がおずおずと尋ねてくる

ああー、大丈夫です。気にしないで下さい

とこっちも営業スマイル(通称悩殺スマイル)を向け、海斗はしるふの手を引き、お化け屋敷の中に足を踏み入れる



もちろん、中は真っ暗だった

薄気味悪さの漂う中、しるふは海斗の腕にギュッとしがみつく

ついでに目もつぶるけど、そうすると聴覚に神経が行ってしまってかすかな物音にも反応してしまう

「どうせ霊感ないんだから怖くなんてないだろうに」

珍しくしるふがしがみついてきて歩きにくさを感じながら海斗はあきれ交じりに言う

「だから怖いんじゃない!!どれが本物で偽物だかわかんないから怖いのよ!!」

もし、目の前にいたのが本物だったら、と思うと怖くて目なんて開けられない

「だから逆に全部偽物だと思えばいいんだよ。それに本当に幽霊がいるんだったら一度お目にかかってみたいと思うけど」

ひょうひょうと言ってのける海斗に怖いものなんてあるのか

「無理無理!!そんなこと絶対無理!!もし後で自分が見たのが本物だってわかったら?」

それ以上に怖いことがあるだろうか

「そしたら、へー珍しいこともあるもんだと、一夏の思い出にすればいいんだって」

道が二手に分かれていて、一方には「そこのない井戸」もう一方には「墓」と書いてあって、海斗は怖がるしるふに返答しつつ、「底のない井戸」の方を首を動かして覗く