「…なに?」


あっ、いけない!
つい、見とれちゃってた…!


「ちょっと…聞きたいことが…あるの」

「えっ?!なんてー?聞こえねぇ」


なぁーぬっ?!

せっかく意を決して言った言葉をーーー!


これ、諒汰じゃなかったら絶対許さん!!


「だぁーかぁーらぁー!」

「……ん?」


なんで、そんなかわいー顔すんの?!
優しい顔されちゃ…聞けない。

突き放されるのが怖い…
この優しい顔、見らんなくなっちゃうんでしょ…?


「どした?」


黙り込んだあたしに優しく話しかける諒汰。


ダメ!
この優しい流れに流されちゃ!

聞かなきゃ!聞くのー、空露羽!


「聞きたいことがあるのっ!」

「なに?」


なぁーーーっ!
サラーっと言うねー。

って、ここ戸惑うとこじゃないか…


「なんで…?」

「えっ?」

「なんで…避けるの…?」

「ごめん、聞こえねぇ…」



あれ?なんでだろ…
目から雫が零れるのは…

止めたくても止まらない…


はらはらと流れてく。


でも、雨の中だし諒汰気付いてないみたい。
よかっ…た。


「……」

「どした?なんかあっ…た?」


ちょっぴり戸惑った口調に、少し焦って涙を拭く。
それでも、溢れ出てしまうんだけど…


「なんで…なの?どうして諒汰は離れてっちゃうの…?」

「えっ、なん…て?って、えっ?!泣いてんの?!」


動揺する諒汰。


「ちょっ、とにかく来い!」


諒汰は反対の手に傘を持ち替えて、右手であたしの手をつかんだ。

諒汰に引っ張られて、ペットみたいに着いて行く。



あたしの家の前を通り過ぎて、諒汰家の前まで来た。

今は、涙で全く見えないけど…



「とにかく入れ。リビングには、母さんいると思うけど…。先俺の部屋行っといて。行ける?」


コクンと頷いて、諒汰部屋に向かう。

階段をとんとん上る。
諒汰ん家の階段だ…。


久しぶりに来たかも…諒汰の部屋。

高校生になってから、諒汰ん家にお邪魔することはあっても、遊ぶことってあんまなかったしね…。

あたしん家に諒汰が来ることは、よくあったけど…
あたしを送って来てくれた諒汰を、ママがいちいち呼び止めるから…

でも、それも嬉しかったり…


それより、涙…止めなきゃ。

諒汰が心配しちゃう。



でも、止めようと思えば思うほど止まらないもの。
そー、うまくはできてないんだね。
人間って…