「琴…N―――――。」





「こないで!!」





琴音の声で俺の言葉がうち消される。





「あなたも嘘をっ…あたしはどーせいらない存在だよ!!だから、あんたの前で消えてあげる。この世にあたしは必要無いんだものね!!」







「は!?お前、何言ってんだ?俺がいつ琴音がいらない存在だと言った!?いつお前を裏切った!?」






…何を言ってるんだ、琴音。





「言ってたじゃん!!お母さんと部屋を出て行った時『――――確かに琴音は必要のない存在だ』って!」






「勘違いもいい所だ。その後の俺の言葉聞いてたか?俺は『――――確かに琴音は必要の無い存在だ。あんたにとってはな!』って言ったんだぞ!?」






「え……?」





琴音が涙でぐしょぐしょになった顔をこっちに向けた。





「はぁーー…覚えとけ。俺にとって琴音は、命そのものだ。お前がいなくなったら俺は生きていけない。それぐらい必要な存在なんだ。だから、俺から離れんな。お前の辛かった分、俺がお前を守るから…な?」





俺は、琴音を安全な所まで連れ出して抱き寄せた。





「こんな顔になって…泣くんだったらこんなことするなよな!」





琴音の涙を拭きとる。




「いいか?今度からは自分を哀れんで生きていくのはやめろ。今まで辛い思い出を経験してきたお前だ、必ず幸せがやってくる。これからもまだまだ不幸は訪れるかも知れない。でも、絶対に心折れんなよ!!俺がそばで支えてやるから。」





琴音は顔をあげ、最大の笑顔でコクンと頷いた―――――――――――――