「部長、きっと人違いでしょう」


「そうか・・・?うん、そうだな、悪かったな、えっと・・・桜井さん?」



挙動不審な私の態度とは正反対に、黒崎さんが冷静に言ってくれたおかげで、ようやく部長は私の腕を離してくれた。



「じゃあよろしく」と、笑いながらセンターを出ていく部長。



ホッと胸を撫で下ろすと同時にまた胃がキリキリと痛みだした。

今度は朝よりもひどい痛みで、立っていられないくらいに。

その場にしゃがみこむと、黒崎さんが「大丈夫か!?」と言ってくれた。

曖昧な笑顔を返すと、黒崎さんは側に来て私を抱え込み、なんとお姫様だっこをした。



「く、黒崎さん!」


「いーから黙ってろ」



何が起こっているのか把握できない。

電話中のオペレーターの人達も、驚いた様子で私達を見つめている。

恥ずかしくて顔から火が出そうだ。


そのままセンターを出てエレベーターに乗り込もうとした時、すれ違いざまに藤本さんと合った。彼女もとても驚いた顔をしている。



「れ、玲人!どうしたの!?」



「こいつ体調悪いようだから処置室に連れていく。悪いがすぐ戻るから後頼むな」



エレベーターのドアが閉まるまで、藤本さんは驚いたままだった。