その日は黒崎さんにもらった薬のおかげか、だいぶ胃の調子も良くなってきたし、仕事もスムーズにはかどった。

あの胃薬、魔法の薬なんじゃないかなって思う。


今のところミスもなさそうだし、今日は嫌なお客さんにも当たらない。




お昼をすませ、午後一に掛ってきたお客さんがとある商品の事をもっと詳しく知りたいということだったので、折り返し電話をすると言って一旦電話を切った。

こういう場合は社員の人などに折りTEL依頼を頼むのだが、藤本さんは午後から不在だった。


私は黒崎さんの所に駆け寄って、お客さんとの電話内容を話した。


デスクに肘をつき、頬杖しながら私の話を真剣に聞いている黒崎さんに心が揺れる。



「折TEL依頼表に会員番号と氏名、電話番号と時間書いとけ。藤本が帰ってきたら電話させる」



藤本・・・


呼び方が藤本に変わっている。この間“恵里香”と呼んでいた時の方が自然に感じてしまい、胸がモヤモヤしてしまった。



「・・・どーした?まだ胃痛いのか?」



不穏な表情が顔に出てしまったいたのか、黒崎さんに顔を覗きこまれる。



「い、いえ!」



私がそう返事したのと同時に、中島部長がセンターに入ってきた。


偉そうな態度で、黒崎さんの方に向かってくる。