やっぱりこの人は冷たい人なんかじゃない。


こうやってみんなの体調を気遣ってくれている。私の体調の事も、顔を見ただけですぐ気付いてくれるなんて、本当に嬉しい。


「ありがとうございます!」


私は深々と礼をした。

すると「ホントに手のかかるやつだな」と言い、左の口角だけ上げて、



・・・・・・笑った!?




見間違いなんかじゃない。今確かに笑った。

じっと見つめていると、黒崎さんが怪訝そうな表情に変わった。




「なんだよ!?」


「い、今笑いましたよね!?」


「はぁ!?」


「私、黒崎さん笑ったの初めて見ました!」




ハッキリ笑ったわけではないが、意地悪そうに少し微笑んでいた。
いつも硬い表情の黒崎さんが、一瞬でも私に笑みを見せてくれた事がとても嬉しかった。



「お前、んなことどーでもいんだよ!薬飲んでさっさと仕事しろ!」


いつもの黒崎さんに戻ってしまったが、全然恐くなんかない。


一瞬笑った黒崎さんの笑顔が、脳裏に焼きついてはがれない。いや、これは一生はがさないでおこうと決めた。