今夜 君をさらいにいく【完】



「あ!やばいっすよ!もう8時過ぎてます!」


「えぇええ!?」



私達は顔を見合わせ、驚いた。

化粧は落とさず、軽く直して服も整えた。夜の仕事用の服装なので、これで会社に行くのは気が引けるが、一度家に帰って着替えてる暇などない。

シャワーも浴びたいけど・・・そんな時間もない。



私達は急いでラブホを飛び出した。三条君はこの日バイトが休みだったので、大通りで別れた。私だけタクシーに乗り込み、会社まで飛ばしてもらう。



普段は8時45分までデスクに着いていなくてはならない。


今は・・・9時過ぎだ。


ICカードを入口で通して、そっとセンターに入る。


何十人もいるオペレーターのデスクを横切り、自分の席に着くと、乱れた呼吸を整えた。


「桜井さん桜井さんっ」


隣のデスクの伊藤さんが肩をたたいてきた。

振り向くと、ジェスチャーで“あっち見て”と指を動かしてきたので、その指の先を見てみると・・・


そこには憤慨した黒崎さんがこっちを見て睨んでいる。


恐ろしくて凍りそうだ。