定時の時刻が過ぎ、皆が帰っていく中、私は給湯室で気持ちを整えていた。
黒崎さんに私の想いを全部伝えたい。
これが最後のチャンスかもしれない。
飯田さんが背中を押してくれた。後悔しないようにしろと。
きっぱり振られて、すっきりしてここを辞めよう。
そしたら黒崎さんとは
もう二度と会わない――――――――――
考えたら泣きそうになった。
給湯室から出ようとしたその時、「桜井さん」と声を掛けられた。
一瞬体が硬直し、眼球だけを動かすとすぐそばに中島部長の姿が見えた。
「ぶ、部長・・・」
「久しぶりだねぇ、ここんとこずっと会えなかったから寂しかったよ。君、店辞めたんだって!?昨日お店に行ったら辞めたと言われて驚いたよ」
会社の広い廊下でこういう事を平気で言える神経がわからない。
でも、ここで負けてなんかいられない。
私は少し後ずさりしながら言う。
「そうです、もう辞めたので何も隠すことなんてないですっそんな脅されるような事もありませんっ」



