この日は朝から曇り空で、洗濯物を外に干すか干さないかで悩んでいた。

せっかくコールセンターの仕事が休みなのだから、ゆっくり寝ていたいところだったが、一週間分の掃除をしなくてはならない。


洗濯はたまに綾がやってくれていたが、受験生の綾にあまり負担はかけさせたくなかった。


本当なら夕飯の支度も洗濯も、親がやってくれているはずだ。それなのに綾は文句のひとつも言わずに自らやってくれる。だから私も弱音なんかはくことなくここまでやってこれたのだ。




外に干そう!と決めて窓を開けようとした時、携帯が鳴った。


飯田さんから、同伴のお誘いのメールだった。


お金を貸してくれるという話も、ちゃんとお断りしなくてはならない。


私は“OKです”と返信し、洗濯物を中に干してから出かける準備を始めた。





待ち合わせ場所の百貨店の入口へ行くと、飯田さんの姿があった。黒のスーツに、流行のバーガンディーカラーのネクタイをしている。


彼は私に気づくと笑顔で近づいてきた。




「急にごめんね、今日昼の仕事休みだったんでしょ?」


「はい、でも大丈夫です。休みといってもなんかゆっくり寝ていられなくて・・・家で暇してました」