今夜 君をさらいにいく【完】


その時、入口付近で声がした。お客さんが二人入って来たらしい。



「あ・・・きたかも・・・ってか友達も一緒かよっ」



入口の方を、目を細めて見ているアユム。


私も見てみたが、入口までは遠いし、店内も暗いのではっきり見えない。



「ちょっと行ってくるわ、後で連れてくる」



そう言って女の子達の方へと行ってしまった。


一人取り残された私は、ワインの入っていたグラスをぎゅっと握った。


後から何人かヘルプの男達が来て色々話していたが、何をしゃべっているのか全く耳に入って来ない。


ただ、鼓動が速くなっている事はわかっていた。



しばらくして、アユムが戻ってきた。他のホスト達が、事情を知ってか知らずか、席を離れていく。



「えー?アユムぅ、一体どうしたのよぉ!」



その時、甘ったるい声が私の背後から聞こえて来た。



振り返ると、そこにいたのは金髪でド派手なメイクのギャルだった。

私とは正反対のタイプ・・・


ふとその子の隣を見ると、もう一人女の子が立っていた。



が・・・


私はその子を見て、声が出なくなるほど驚いた。



そこにいたのは・・・




桜井安奈だった。