軽い気持ちで言ってみただけなのに、まさか本当に別れてくれるとは。その彼女を少し哀れに思ったが、今は人の不幸より自分の幸せが優先だ。
アユムがどの程度私を想ってくれているのか、この目で確かめてみたかった。
次の日、私はいつもより念入りに化粧をし、服も買ったばかりのワンピースをクローゼットから取り出した。
気合いを入れている自分を傍から見ると、可笑しくなってしまう。だけど、彼女がどんな子かは知らないが、自分の方が綺麗だと思われたい。
仕事を定時で切り上げ、新宿駅近くのカフェに向かった。
気持ちは落ち着いていた。アユムが、やっぱり彼女と別れないと言いだすかもしれない。でも私はそれでも別にかまわない。
昨夜からずっと、こう思っていた。
私はプライドが高い人間だ。アユムにずっと口説かれ続けていたのに、彼女がいると言われ、騙された気分になって腹が立っただけなのだろう。別にアユムを愛しているわけではない。
ただこれは、私を騙していた復讐・・・なのよ、と。



