今夜 君をさらいにいく【完】




「・・・やっ・・・!」



バシッ・・・



少し力が緩んだすきに、私はアユムの頬をたたいた。



アユムは悲しそうな瞳で見つめてきた。



「・・・信じてほしい・・・本当に・・・本当に恵里香ちゃんだけだから・・・こんな気持ちになったの」



「こんな事されて誰が信用できる・・・?」


「ごめん・・・でも好きなんだ。彼女とはちゃんと別れるから・・・」




そんな言葉を信用できるほど私はこの男を知らないし、好きでもない。

でも、アユムが本当に私の事を思っているのなら・・・どんな事でもやってくれるだろう。



「本当に私が好きなの?」


「うん・・・」



「じゃあ、私の目の前で彼女と別れてみせてよ」


「え?」


「彼女、店に来るんでしょ?その時私も行くわ。そこではっきりさせて」


「・・・」



アユムは戸惑った表情をして俯いた。


ほらね、結局その程度の気持ちだったのよ。



「・・・わかった・・・それで恵里香ちゃんが信じてくれるなら・・・明日言う」



驚いた。断るだろうと思っていたのに。


明日私の目の前で別れてくれるらしい。


それほどまでに私を失いたくないのだろうか。