今夜 君をさらいにいく【完】


もちろん自分もそのつもりで電話していたんだろう。


「・・・ええ」


その言葉に、アユムのテンションがますます高くなった。





それから、私達は2度会った。2回とも、お酒を飲んで笑って楽しんで、そして決まってマンションの前でサヨナラする。アユムは必ず送ってくれる。さりげなく寄り添ったりもしてくる。でも、それ以上の男女の関係になろうとはしなかった。


口では好きだよなんていつも言ってくるが、本当にそう思ってるのだろうか。



少しずつ、アユムに惹かれていってる自分が恐くなる。



3度目に会った時、アユムに家で休んでいくように勧めた。驚いてはいたが、私が微笑むと嬉しそうに頷いた。



リビングのソファに座り、私が淹れたコーヒーを飲んでいるアユム。


どこかそわそわ落ち着きない様子だった。



「シンプルな部屋だねっ」



玲人の趣味に合わせて、モノトーンな家具しか置いていなかった。



「女の子らしくないでしょ」


「ううん、恵里香ちゃんらしい。俺好きだよ」



そう言い、隣に座った私の髪の毛を触る。


アユムは真剣なまなざしで見つめていた。吸いこまれそうになる茶色がかった瞳。



あと数センチで唇が重なり合おうとした瞬間、携帯がなった。