「ああ、キャッチじゃないですよ?どっか遊びに行かないかなぁって思って」


「・・・ナンパ?」


「まぁ・・・聞こえが悪いですけど、そういう事ですかねっ」



男は、はにかんだ笑顔を私に向けた。



「もちろん奢りますよ!」


「・・・・・・」



いつもならこんなナンパヤローも当たり前にスル―していた。

だけど・・・


今日は一人でいたくない気分だった。




「・・・楽しませてくれるの?」


「おおお!そりゃもう!」




男は驚いた顔をして喜んだ。


ナンパに付き合うなんて、生まれて初めてだった。心の片隅では“何やってるの!?”と怒っている私もいるが、もう一方でこの男が玲人を忘れさせてくれるのではないかと、期待している自分がいる。




「名前なんていうの?」



「アユムっすよ」


「アユム・・・くんね」



対してこの子に興味はないけれども、一人でいるよりはマシ。



私達は場所を移動して、新大久保にあるショットバーに入った。

店内は薄暗く、隠れ家っぽい感じで、ニューヨークのブロンクスにありそうな安酒場をイメージしたバーだった。

棚には色とりどりのリキュールが並んでいて、お客さんは私達の他に、若いカップルが一組だけいた。