会社を出ると一気に虚しくなった。


私は今まで何をしてきたんだろうと。全ては自分のためじゃなく、玲人のために頑張ってきたのだ。その努力が、一瞬にして壊されたような感覚に陥った。


夕暮れ時は余計に切なくなる。


こんな日は一人でいたくない。飲みにでも行こうかと考えたが、気が乗らない。自分がどうしたいのか、整理がつかない。こんな事は初めてだった。



靖国通りのドンキホーテの前を横切った時、ふいに大きな影が私の目の前に現れた。

顔を上げると、そこにはホストらしき男性が立っていた。シャドーストライプ生地のスーツに、髪が肩までのびていて邪魔そう。キャッチなら帰り道に何度か声をかけられた事があるので慣れている。


男は目の前で立ち止まり、私を中々前に進ませてはくれない。



「お姉さん、お暇ですか?」



にっこりと微笑む彼は、まだ幼さが残る笑顔を見せた。年は自分と同じくらいか年下か。

私はいつも通り、スル―しようとしたが、右へ足を踏み出そうと思うと右側へ、左へ足を踏み出そうとすると左側へと体を移動させてくる。


今日のホストはしつこい。



「暇じゃないわ」



睨んでやると大抵はひかれる。なのにこの男は全く動じない。