黒崎さんは足を組み、ブラックコーヒーを口にした。
それがまた絵になってカッコいい。その姿に見とれていると黒崎さんが言った。
「それ、チョコレートか?」
「はい!季節限定のチョコレートブラウニーモカです!飲んでみます?」
「・・・長ったらしい名前だな・・・」
そう言いながら私の手からマグカップを受け取ると一口飲みこんだ。
間接キス・・・私はこういう自然な感じに憧れていた。
すると、しかめっ面で「あっめぇ・・・」と、つぶやいた。
「そうですか!?」
「よくそういう甘ったるいの飲めるな」
「もー!文句言うなら飲まないでくださいよっ」
口をとがらせて怒ると、黒崎さんの表情が緩んだ。
「元気みたいだな」
「え?」
「最近忙しくて構ってやれなかったから」
無防備なその笑顔に胸を打たれる。
そんな顔・・・反則だよ・・・
「今日っどこ行きますか!?てか黒崎さん電車で来たんですか?」
「いや、車」
「え!車持ってたんですか!?」
「ああ。電車だと駅とかで会社の奴らに出くわす可能性も高いからな。だから今日も車移動だぞ」
やっぱりこの関係は秘密にしていなければならないのだ。
一緒に手を繋いで街を歩くなんて遠い夢の話なのだろうか。



