なぜ飯田さんはここまで私に尽くしてくれるのか。こんな何も持っていない、ましてや他の男を好きと言っているこの女のどこが良いのかわからない。




「・・・そこまでしてどうして私なんかに・・・」



飯田さんはまた目じりを下げて微笑んだ。そして視線を膝に落とし、静かに話し始めた。



「君は覚えているかな。初めて会った日・・・俺は君に救われたんだよ」


「・・・え?」




数が月前、飯田さんが初めてお店に来た時。

会社の人達に連れられてやってきた彼は、入口にあった風俗雑誌に載っていた私を見て指名してきた。

装飾品が高級ブランド品ばっかで、私は良いお客さんになるかもなんて思っていた。




「あの頃の俺は疲れ果てていたんだ。良い大学出て、有名企業に就職して。親からも周りからも期待されっぱなしで。30になるまでずっとそのまま突っ走ってきた。もちろん長く付き合ってた彼女もいたよ、でも・・・仕事仕事ってそればっかしかなかったから、彼女にもとうとう愛想つかされてしまってね。いい年こいて何やってるんだって感じだろ」


笑って話す彼の心の奥にある悲しみが、見え隠れしている。



「そんな時、この店で君と出逢って。君は明るかった。確かに仕事だからそうしてくれているんだってこともわかってたよ。でも、君が言ったんだ」