【2】



 それから二週間、結局ユイはエイジとレンの元に居座っていた。

 だが肝心のユイという女の正体は、依然として分からずに。

 …というか、お互いに過去のことには意識して触れないようにしていた。

 ユイに何か深い事情があるのは十分解っていたし、こちらも聞いて欲しくないことなど、山ほどある。

 そして、三人の生活は、実際それなりに楽しかった。

 だからそれでいいと 、皆が思っていた。



「ただいま!!」



 昨日引っ越してきたばかりのアパートで少ない荷物の整理をしていると、買出しに行っていたユイが戻ってくる。

 どたどたとまだ掃除の済んでいないリビングに入り、ユイはエイジとレンを無理矢理ソファに並べて座らせる。



「何なんだよ」



 迷惑そうなレンを、まぁまぁと片手でたしなめて。



「質屋で掘り出し物見つけちゃった! 見て、ポラロイド カメラ~!!」

「…買うなよ、んなもん」

「いいじゃない、安かったんだから。ね、三人で写真撮ろう」



 ここに来た時よりも、ユイは数段明るくなったような気がする。

 正直言って、エイジもレンもその明るさに救われる部分があった。



「…意味もねェのに写真かよ?」

「いいじゃない、レン。タイマー、タイマーっと…」



 カメラを固定しながら、ユイはなにやら操作して。



「できた。エイジ、レン~!!」

「ぅわ!?」

「お、おいおい…!!」



 ユイはエイジとレンの間に割り込んで、その肩に手をまわす。



「笑って、笑って~」



 あまりのおとぼけぶりに、思わず笑いがこみあげる二人 。

 その時、カメラのシャッターがカシャリと音を立てた。

 出てきた写真を、レンが手にする。