【3】



 そして、夜が明ける。

 明るくなったばかりの空の下、ミサトは組みあがったライフルを手に、向かい側にあるホテルの玄関ロビーに照準を合わせていた。



「…そろそろ、ジャストタイム」



 ミサトは、そう呟いた。

 今この瞬間も、ミサトは自分が分からない。

 本当に死にたいのか、それとも生き延びたいのか。

 それを確かめる為には、今回のターゲットであるロンという男は、申し分のない相手だった。

 ホテルの玄関前にリムジンが止まる。

 息を止めて、ミサトはトリガーに指をかけた。

 自動ドアが開き、初老の男が玄関から出てくる。



「ロンじゃない…!?」



 昨日の連絡では、確かにロンは7時にホテルを後にすると言っていたのに。



「………!!」



 いきなり背後から殺気を感じて、ミサトはその場を飛びのいた。

 すかさず、銃弾が打ち込まれる。

 避けてはいるが、何発かの銃弾がミサトの太ももや脇腹、肩のあたりを翳めていく。

 後ろに向けてライフルを撃ち、ミサトは非常階段に飛び移る。



「どうしてバレたのよ…っ!!」



 降りる途中でビルの窓ガラスを蹴り破り、ビルの中に入る。

 階段を1階まで降りて、裏口から外に出た。

 逃げるのに邪魔なライフルを捨てて走りながら携帯を取り出し、たった一つだけメモリーしてある番号に電話をかける。



「何で出ないのっ!!」



 苛々して、声を荒げるミサト。

 何コール目かで、ようやく電話はつながった。



「あたしっ!! 計画、筒抜けじゃないのよ!?」



 だが、返ってきたのは組織の人間にとっては最悪の返事だった。