「“Chance in a Million”偶然よ。エイジが偶然あたしの前に現れて、偶然追われてて。そして偶然、あたしがエイジを助けたいと思った…。ただ、それだけの事よ」

「違うな…」



 エイジは、必死に言葉を紡ぎだす。

 あの組織に属しておきながら、ミサトがとった行動はあまりにも初歩的なミスばかりだ。

 どう考えても、わざととしか思えない。

 そこから導き出される答えは。



「死ぬ気…なんだろ…? だから、危険を犯してまで…」



 ミサトは、ふっと自嘲的に笑顔を浮かべる。



「それも…偶然、よ。ごめんね、お酒に薬、混ぜたりして 」



 その言葉を聞いた後、エイジはソファに倒れた。



「あたしとエイジが同じ香りのする人間なら、死ぬのはエイジじゃなくて、あたし。だってもう…」



 疲れたの、という言葉を飲み込んで、ミサトはエイジに毛布をかけてやる。

 そして着替えを済ませると重いボストンバッグを手に取り、ミサトは部屋を出て行った。