「あァ…そういうことか。どうりで俺と同じ匂いがするワケだぜ」



 納得したように男はそう言うと立ち上がり、煙草を取り出して、こっちを真っ直ぐに見つめて。



「昼間の狙撃手、あんただな?」



 つい、うっかり口走ってしまったこととはいえ。

 すぐにここまで理解してしまうあたりやっぱり、只者じゃないとミサトは思う。

 同時にいつでも仕掛けられるように神経を研ぎ澄ます。

 頭の中で、周りの状態、そしてこれからこの男がどんな行動に出るのか、あらゆる状況を想定する。

 ――…だが。



「俺はエイジ、よろしく」



 男はそう言って、右手をこっちに差し出した。



「…へっ?」



 そういう状況は、これっぽっちも想定していなかった。

 かなり真の抜けた顔で、ミサトはエイジとその差し出された右手とを、交互に見つめる。



「言っとくけどよ、俺はもうロンのガードじゃねェ。たったさっき、一仕事終えたばかりだしよ」

「ロンのガードじゃないの?」



 ミサトの質問に、エイジは笑って答えた。



「俺達は“情報屋”さ」



 そう言って、エイジはいきなりミサトの肩に手を回す。



「ちょ…何すんのよ」

「しっ…そのまま歩け」



 エイジはちらりと後ろに目をやる。

 さっきから気付いてはいたが、ミサトは周囲から感じる殺気を見逃してはいなかった。

 まぁ、この状況を総合的に考えると。



「あんた、何かヘマやらかしたのね?」



 昼間は確かに、ガードとしての能力はピカイチだと思ったのだが。

 見込み違いか。